孙彬,黑田彰
抄録:小稿は最近、深圳市金石芸術博物館(呉強華理事長)に収蔵された北魏石床二種(一・五面、三面)の内、一・五面の新出石床(董黯石床Cと仮称する)の内容を、世界に先駆けて紹介し、その図像内容について検討しようとする。まず本石床において特徴的なのが、全五図(と牛の一部)の内の三図を占める、董黯図の諸場面である。董黯図に関しては近時、総合的な考察を試み(拙稿「董黯覚書(上)(下)―董黯画巻の復元―」(京都女子大学『女子大国文』164、165、平成31年1月、令和元年9月)、そこで、現存董黯図の描かれる全ての現存遺品の図像を、十二場面認定した。ところが、本石床のそれは、六場面の多きに亙る図像を有し、しかもその内の五場面は、上記十二場面には含まれない、可能性が高いものばかりである。そのことを踏まえて、小稿では、粉本となった董黯画巻の場面数が、十二場面から十七場面へ増えようこと、また、新出五場面の研究史意義などについて、具体的に論じた。さらに残る二図をめぐり、左側板中央図の右欄に刻された、謎の四文字題記の内容を大胆に探り、それが「王子(喬)、戦(戦)競(競)」と判読されることを踏まえ、残る二図が戦戦兢兢図、王子喬図に比定されることを結論とした。